先日、少し気になるニュースがありました。
金融庁が組織再編を行い、「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設しました。
これまで、暗号資産関連の業務は「参事官室」や「モニタリング室」などが担っていました。
今回の組織再編では、新設された資産運用・保険監督局の下に独立した「課」として位置付けられました。
単なる役所の組織変更にも見えますが、私は、これから起こる大きな変化の予兆だと思っています。
というのも、日本では2026年7月、暗号資産を金融商品として位置づける金融商品取引法が成立しました。
今後はインサイダー取引規制や情報開示など、株式市場に近い投資家保護の仕組みが入ってきます。
さらに、現在の予定では特定の暗号資産について、2028年1月から20%の申告分離課税へ移行する方向です。
では、その先に何が起こるのか?
経営者として何を備えておけば良いか?
ここで、ヒントになるのがアメリカです。
アメリカで起きた経済・社会現象は、約10年遅れで日本に上陸するという「日本=アメリカの10年後遅れ説」もあります。
アメリカでは「怪しい資産」から「普通の投資対象」へ
2024年1月10日、米証券取引委員会(SEC)は、現物ビットコインを裏付けとする複数の上場ETFについて、上場・取引を承認しました。
米国SECは長年、ビットコイン現物ETFを認めてきませんでしたが、ついに承認しました。
ここから景色が変わりました。
重要なのは、ビットコインの価格が上がったことだけではありません。
ETFになったことで、暗号資産取引所に口座を作り、自分でウォレットを管理しなくても、既存の証券口座からビットコインへ投資できるようになったことです。
つまり、
「暗号資産に詳しい人が買うもの」
から、
「普通の金融商品としてポートフォリオに入れるもの」
へ、一歩近づいたわけです。
その後はBlackRockなど大手金融機関の存在感も強まり、暗号資産と既存金融の境界線は以前よりかなり薄くなりました。
ビットコインという資産そのものが変わったことではありません。
「誰が、どのような方法で市場に参加できるのか」という参加の枠組みが変わったのです。
暗号資産市場に詳しい個人投資家だけではなく、資産運用会社や証券会社、金融アドバイザー、機関投資家など、従来の金融市場にいる参加者にとっても検討しやすい環境が整っていきました。
もちろん、ビットコインそのものの価格変動リスクがなくなったわけではありません。
SECも承認時、ビットコインそのものを承認・推奨したものではないことを明確にしています。
ここで重要なのは、
「暗号資産=安全な資産」になったのではなく、既存の金融市場との接点が大きく増えた
という点です。
価格の裏で広がった「参加者の層」
暗号資産のニュースでは、どうしても価格が注目されます。
「ビットコインはいくらになったのか?」
「ETFへの資金流入で価格はどう動いたのか?」
といった話題です。
ただ、米国の事例を長い目で見ると、価格の上下よりも重要なのは、市場に参加する「層」そのものが広がったことかもしれません。
資産運用会社や機関投資家が検討しやすい環境が整えば、市場に入ってくる資金の性格も変わってきます。
短期的な思惑で動く資金だけでなく、ポートフォリオの一部として長期保有される資金も増えていく可能性があるからです。
例えば、日本では企業が暗号資産を購入することは珍しいですが、金融商品として認識されれば、会社の資産の一部として保有する動きも出てくるかもしれません。
同じことが日本でも起こるのではないか?
もちろん、アメリカと日本では市場規模も投資文化も違います。
日本で現物ビットコインETFが広く普及することが決まっているわけでもありません。
それでも私は、数年遅れて似た変化が日本でも起きる可能性があると思っています。
たとえば、銀行や証券会社、運用会社が暗号資産関連サービスへ本格参入する。
ビットコインETFが登場し、将来的には既存の証券口座から購入できるようになる。
そして企業の余剰資金の運用でも、「現預金・株式・債券」に加えて暗号資産を検討する会社が少しずつ増えていく。
つまり、
これまで暗号資産市場に参加してこなかった層が、新たに関心を持つ。
「入口が変わることで参加者が変わる」ということです。
そうなれば、暗号資産交換業者だけを見ていても市場全体が分からなくなります。
証券会社、銀行、資産運用会社、決済事業者などを巻き込んだ「金融業界全体の話」になっていくからです。
今回、金融庁が「暗号資産・ステーブルコイン課」を独立させたことも、その未来を見据えた動きの一つに見えます。
実際、SBI証券や楽天証券はすでに、暗号資産の投資信託の商品組成に向けて、動いています。
<日本経済新聞>
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB153GC0V10C26A4000000/
暗号資産だけではない、ステーブルコインにも注目
今回新設された部署の名称が「暗号資産課」ではなく、「暗号資産・ステーブルコイン課」となっている点も注目したいところです。
暗号資産というと、ビットコインなどの、大きな価格変動をイメージする人が多いかもしれません。
一方、ステーブルコインは、法定通貨などに価値を連動(ペグ)させることを目的として設計され、送金や決済などでの活用も想定されています。
例えば、米ドルに連動する「USDC」であれば、1USDC=1ドルと1:1の関係で連動しています。
暗号資産を「投資」、ステーブルコインを「決済」と単純に分けられるわけではありませんが、ブロックチェーン技術が金融分野で使われる場面は、投資だけでなく、日常の買い物など、現実世界にも広がってきています。
実際、日本でも電子決済手段やステーブルコインに関する制度整備は進められています。
今後を見る際には、ビットコイン価格だけではなく、ブロックチェーン技術が既存金融の中でどこに組み込まれていくのか?という視点も重要になってきます。
まとめ
ビットコインがいくらになるか?
もちろん気になります。
ただ、経営者として考えるなら、それ以上に注目したいのは「暗号資産を誰が扱うようになるのか?」ではないでしょうか。
米国では規制が整い、ETFという器ができたことで、大手金融機関が一気に市場へ入ってきました。
日本でも同じようなことが起これば、暗号資産は「投機好きな個人が売買するもの」という現在のイメージから、「企業財務や資産運用の選択肢の一つ」へ徐々に変わっていくかもしれません。
2028年まで、あと2年弱。
「ビットコインを買うか、買わないか」だけで考えていると、経営者としては、やや話が小さいです。
自社の資金管理、決済、資産運用、そして新しい金融サービスに、暗号資産やステーブルコインがどう入り込んでくるのか。
そして、どのような企業やサービス、利用方法が生まれてくるのか?
自社はどう関係するか?
経営者にとっては、今後の変化に注目していきたいテーマです。
<しるし株式会社>
会社概要
| 社名 | しるし株式会社(SHIRUSHI Inc.) |
|---|---|
| 設立 | 2017年9月1日 |
| 代表取締役 | 櫻田 学 |
| 資本金 | 1,718万円 |
| 事業内容 | ブロックチェーンに関する製品開発およびコンサルティング、データセンター運営、サーバーの研究・開発・運用・販売事業 |
| 所在地 | 本社:東京都立川市錦町2-3-3 オリンピック錦町ビル 富山支店(データセンター):富山県富山市内 |








