ブラジルで進むトークン化証券の制度整備――日本企業が今知っておきたいポイント

ブラジル証券取引委員会(CVM)は、トークン化証券に関する実験的な規制枠組みを検討する作業部会を設置しました。

今回の動きが注目される理由は、単にブロックチェーンの利用可否を議論するのではなく、正式な所有者記録や秘密鍵の管理、取引の取消可能性、システム障害時の責任など、実務上の重要論点を検討対象としている点にあります。ブラジルでは、すでに一定規模のRWA市場と実証事例が存在します。

本記事では、

  • ブラジル当局が何を検討しているのか
  • なぜ「技術」よりも「責任の所在」が焦点になっているのか
  • この動きが日本の経営者にとってどんな意味を持つのか

を、客観的に整理してみたいと思います。

 

① 証券規制当局が専門チームを設置

ブラジル証券取引委員会(CVM)は、ブロックチェーン上で発行・管理・取引される証券について、実験的な規制枠組みを検討する作業部会を新たに立ち上げました。

作業部会の正式な設置から60日以内に、CVMの意思決定機関へ「実験的な規制制度の提案」が提出される予定です。作業部会自体の当初の活動期間は120日で、必要に応じて30日延長が可能とされています。

60日以内にまとまるのはあくまで最初の成果物であり、その後、活動内容と提言をまとめた最終報告書が提出される流れです。

💡 一言でいうと:過去の実証結果を検証しながら、次の規制枠組みを具体化する動きです。

② 技術だけでなく「責任の所在」も重要な論点

ブロックチェーン上では、従来は複数の機関が別々に担ってきた機能を、同一の基盤上で連携・統合できる可能性があります。一方で、事故発生時の責任や法的所有権の所在は曖昧になりやすく、次の4点が主な論点として挙げられています。

  • 所有者情報:誰の記録を正式な所有者情報として扱うのか。
  • 秘密鍵の管理:秘密鍵を誰が管理し、紛失時にどう対応するのか。
  • 取引の取消:誤送信などの取引を取り消せる仕組みがあるのか。
  • 障害時の責任:システム障害が起きた際、誰が責任を負うのか。

💡 ポイント:技術の一体化が進むほど、責任の所在を明確にする制度設計が求められます。

③ ブラジルのRWA市場はすでに約23億ドル規模

CoinDeskが紹介したRWA Monitorの集計によると、ブラジルのRWA(現実資産のトークン化)市場は約120億レアル、約23億4,000万ドルに達しています。このうち約13億ドルを社債やコマーシャルノートが占めるとされています。

規制サンドボックスの枠組みの中で、ブロックチェーンを使った証券の発行や二次流通もすでに試みられており、今回の作業部会は、その実証結果を踏まえて検討を進めるものと位置づけられます。

💡 ポイント:トークン化市場は、個別の実証にとどまらず、より広い制度整備が検討される段階へ進みつつあります。

④ 日本の現状と知っておきたいポイント

ブラジルが「責任の所在」を議論しているのと同じタイミングで、日本国内でも大きな動きがありました。政府は7月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」を閣議決定し、資産運用立国に関する項目へ「オンチェーン金融の推進を図る」と明記したのです。ブロックチェーンを活用した金融・決済の仕組みが、国家の基本方針に位置づけられた形です。

  • 閣議決定の内容:トークン化預金やステーブルコインによる資金決済を、商流・物流データの管理とプログラムで連動させる「オンチェーン金融」の推進が、家計の資産形成促進などと並ぶ政策課題として盛り込まれた。
  • これまでの積み重ね:2020年の改正金商法による電子記録移転権利の新設、自民党PTによる提言(5月)、トークン化株式・トークン化法の中間整理(4月)など、実務・政策の両面で下地が作られてきた。
  • 今後の展開(見通し):閣議決定はあくまで方向性の明記であり、具体的な制度設計はこれから。今後は、証券・預金・決済といった個別分野ごとに、ブラジルと同様の「所有者情報」「秘密鍵管理」「責任分担」といった論点が、より具体的なルールとして整理されていくことが予想されます。

💡 一言でいうと:日本はすでに「推進する」という国家方針を示した段階にあり、次は各国と同じく「どう責任を分担するか」という実務設計の局面に入っていくと見られます。

編集後記

世界では、不動産や社債などの資産をブロックチェーン上で発行・管理・取引するための制度整備が進められています。

今回注目したいのは、ブラジル当局が最初の成果物について、作業部会の設置から60日以内という明確な期限を設けている点です。もっとも、60日以内に正式な制度が完成するわけではなく、まずは実験的な規制枠組みの提案がまとめられる予定です。

新しい技術について、実証結果を検証しながら、期限を設けて具体的な制度案へつなげていく進め方は、日本企業にとっても参考になる部分があるのではないでしょうか。当社としても、技術の進展だけでなく、所有権や責任分担を含む各国の制度設計に注目してまいります。

出典:CoinDesk(2026年7月20日)、各種公開情報

会社概要

社名しるし株式会社(SHIRUSHI Inc.)
設立2017年9月1日
代表取締役櫻田 学
資本金1,718万円
事業内容ブロックチェーンに関する製品開発およびコンサルティング、データセンター運営、サーバーの研究・開発・運用・販売事業
所在地本社:東京都立川市錦町2-3-3 オリンピック錦町ビル
富山支店(データセンター):富山県富山市内

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