海外送金の待ち時間はなくなるのか?経営者が知っておきたいSWIFTの実証実験

海外企業と取引をしたことのある経営者なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。

「金曜に送金したのに、相手に着くのは翌週の火曜」
「海外送金だから仕方ない」

この”当たり前”を変えようとしているのが、今回のSWIFTの発表です。

今回の実証実験がすぐに実用化されるわけではありませんが、将来的に24時間365日の国際送金が一般化すれば、企業経営にも変化が出てくる可能性があります。あくまで中立的な視点から、今回の実証実験が何を意味するのかを整理してみたいと思います。

世界中の銀行が利用する国際送金のネットワークであるSWIFT(国際銀行間通信協会)が、2026年7月9日、ブリュッセルにて、ブロックチェーンを基盤とした新しい共有台帳の初期利用に向けた準備が整ったことを発表しました。

構想発表から稼働までわずか9カ月という異例のスピードで進展し、次の段階に進もうとしています。

今回、HSBC、シティ、BNPパリバ、UBSなど世界の大手銀行17行と共同で、実証実験を開始することが明らかになりました。

使われるのは、銀行口座の預金をデジタル化した「トークン化預金」です。これを用いて、国境を越えた送金を検証していく方針です。

背景にあるのは、銀行の営業時間や休日に縛られてきた国際送金の仕組みです。今回の取り組みが目指すのは、こうした制約を取り払い、24時間365日、いつでも送金が動く世界の実現です。

 

SWIFTの実証実験で何が変わるのか

 

① SWIFTとは何か:これまでの役割

SWIFTは、世界中の銀行が国際送金を行う際に利用する「メッセージ網」です。1970年代から稼働しており、現在も200以上の国と地域、1万以上の金融機関がこのネットワークを利用しています。

重要なのは、SWIFT自体はお金そのものを動かしているわけではないという点です。SWIFTが行っているのは、「A銀行からB銀行へ、この金額を送ってください」というメッセージを、安全かつ標準化された形式でやり取りすることです。実際の資金移動は、各銀行が持つ既存の決済システムを通じて行われます。

💡 ポイント:これまでSWIFTは、主に銀行同士へ「このお金を送ってください」と伝えるメッセージ網でした。お金そのものを運ぶ仕組みではなく、「送金の指示」を安全に伝えるインフラであったという点がポイントです。

② 今回の実証実験:何が変わろうとしているのか

トークン化預金とは

トークン化預金とは、銀行に預けられている預金を、ブロックチェーン上でデジタルなトークンとして発行したものです。暗号資産のように新しい通貨を発行するわけではなく、あくまで「既存の銀行預金」をデジタルな形にする仕組みです。

共有台帳の役割

SWIFTが開発した共有台帳は、参加する銀行同士が同じ記録をリアルタイムで共有できる仕組みです。これにより、送金の指示と資金の移動をほぼ同時に処理できるようになり、従来のように「メッセージは届いたが、実際の着金は翌々営業日」といったタイムラグを減らせる可能性があります。

参加する銀行と規模

今回の実証実験には、HSBC、シティ、BNPパリバ、UBSをはじめとする17の大手銀行が参加します。まずは限られた環境で運用を開始し、そこから台帳の機能や参加範囲を段階的に広げていく方針とされています。

③ 暗号資産の送金との違い:維持される「銀行の仕組み」

ここで誤解しやすいのが、「結局、暗号資産の送金と同じなのでは」という点です。しかし、両者には明確な違いがあります。

  • 匿名性を重視する暗号資産の送金とは異なり、送金者・受取人の本人確認(KYC)は維持される
  • マネーロンダリング対策などのコンプライアンス体制も従来通り維持される
  • 銀行が担ってきた信用管理・リスク管理の仕組みも維持される
  • SWIFTが独自に暗号資産を発行する、という話ではない

💡 一言でいうと:従来の銀行制度が持つ安全性や規制の枠組みは残したまま、ブロックチェーンの「即時性」と「常時稼働性」だけを取り入れようとする仕組みです。

④ 今後の展望:プログラマブルマネーへの布石

今回の発表は、あくまで「初期利用」の段階であり、本格的な実運用への移行ではありません。

SWIFTは、17行のグループを超えた対応拡大の具体的な時期や、一般提供の開始時期については明言していません。今後、実証を重ねながら段階的に検証していく方針とみられます。

さらに将来的には、あらかじめ定めた条件を満たした場合に自動で支払いが実行される「プログラマブルマネー」といった応用も視野に入れているとされています。例えば、商品の納品確認が取れた時点で自動的に決済が行われる、といった使い方が想定されます。

⑤ まとめ:正確に理解しておきたいポイント

今回の報道は「SWIFTにブロックチェーン解禁」といったセンセーショナルな言葉で語られることもありますが、正確に理解しておきたい点は以下の通りです。

  • SWIFTが暗号資産を発行する話ではない
  • ビットコインを国際送金に使う話でもない
  • あくまで銀行預金をトークン化して送る実証実験である
  • 銀行の規制・本人確認・安全管理は維持される
  • 目的は国際送金を夜間や休日にも動かせるようにすること

編集後記

今回のニュースで興味深いのは、「ブロックチェーンが銀行を置き換える」という話ではないことです。むしろ逆で、世界の大手銀行がブロックチェーンを既存の金融インフラに取り込もうとしている点にあります。

企業経営者にとって重要なのは、「暗号資産を使うかどうか」ではなく、海外送金や資金決済が今後どう変わるのかを知っておくことです。

変化は一気には起こりません。しかし、こうした実証実験の積み重ねが、数年後には「海外送金は数日かかるもの」という常識を変えているかもしれません。

・海外取引先への支払いを休日でも実行できる
・輸入した商品が港へ到着したら決済される
・輸出入企業の事務負担が減る
・資金繰りの見通しを立てやすくなる
といった、経営にも関係するテーマだからこそ、今後も継続的に注目していきたいニュースです。

会社概要

社名しるし株式会社(SHIRUSHI Inc.)
設立2017年9月1日
代表取締役櫻田 学
資本金1,718万円
事業内容ブロックチェーンに関する製品開発およびコンサルティング、データセンター運営、サーバーの研究・開発・運用・販売事業
所在地本社:東京都立川市錦町2-3-3 オリンピック錦町ビル
富山支店(データセンター):富山県富山市内

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